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第五十七話 君の力が必要なんだ

Penulis: 空蝉ゆあん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-10 08:00:00

 五十七話 君の力が必要なんだ

 全ての主導権を握っているのはカリアだ。その事に気づいた時には、手遅れの状態になるだろう。ロロンを使い、全てをリセットしようとしているギルバートは、隠されたコードに鍵をかけると、自らの記憶の最深部へと放り投げた。

 自分以外が踏み込めないように、暗号化すると、管理者権限を使い、スタートの文字にカーソルを当てた。

 ここをクリックすれば、全てが最初からになる。メモリアルホロウでの出来事は勿論、プレイヤーの記憶そのものも削除されてしまう。

 無理矢理にでも俺の意識から消去するので、負担はかなり重たいだろう。眠った状態にいる肉体にもその影響はいくはずだ。

 俺の事を考えれば、この賭けに出るのは避けた方がいい。脳に装置をつけている以上、その電流が圧迫され、頭ごと吹っ飛ぶ可能性もあるから余計だろう。

「……仕方ないな」

 家族として暮らしていた以上、俺にこれ以上危険を与えるのは避けたいのが本心だ。ずっと手に入れたい存在を手元に置く事が出来たのだから、自らその夢の一つを消し去ってしまう可能性がある。

 現実世界で植物人間になっている美緒の体を使い、本来なら俺にかかるであろう重圧を、美緒の体に擬似体験として書き換え、全ての痛みの経験を本来のプレイヤーから書き写す事を考えた。

「現実の僕が何を考えていたのかは見えない。それでもレイくんを失う事の方が僕にとっても彼女にとっても苦痛である事には間違えはない」

 シナリオマスターとして新しい自分を作り出した彼は、もう美緒とは言えないだろう。この世界で生きると決めたあの時から、決断は決まっていたのかもしれない。

 現プレイヤーの俺と機械の接続を自分の体へと繋ぎ直していく。装置を外された事を鳴らす警告音が鳴っている。本来ならギルバート自身の手でするべきなのだが、彼はメモリアルホロウが生み出した作られた人格でもある。美緒としての体験と記憶を引き継いでいたとしても、彼は現実世界に介入する事が出来ない。

 ギリギリと歯を食いしばると、数分前の事を思い出していた。自分から接触を避けたかった人物の助力がないと、
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